50歳以上の2人に1人がジンジバリス菌(歯周病菌)を保菌していることが判明! ジンジバリス菌(歯周病菌)増加は認知症の一因となる研究結果も
マスクが生活必需品となって早2年。
外出時や、人と人との距離が密な環境においてなくてはならないものとなりました。この傾向は新型コロナウイルスが収束したとしても、新たな生活様式におけるエチケットとして、しばらくの間、続くのではないでしょうか。
マスク着用による口腔内環境について意識調査
L8020協議会では、「マスク着用による口腔内環境に関する意識調査」を実施いたしました。
調査は全国の50歳〜75歳までの男女624名を対象としたインターネット調査です。
調査の結果、2人に1人がマスク着用による口腔内の不快感を表明。4割以上の人が口臭の悪化、半数以上がネバつきを実感していたのです。
口腔内のジンジバリス菌を調査
口臭やネバつき、口渇感など、口腔内の不快を感じている人が多いことが判明いたしました。その原因を調査するために歯周病菌の代表であるジンジバリス菌の口腔内保菌について検査を実施しています。
その結果、調査対象者の2人に1人がジンジバリス菌を保菌していることが判明したのです。このジンジバリス菌は、口腔内の環境悪化に大きな影響を及ぼすと言われています。
このことから、ジンジバリス菌を保菌している人が、昨今のマスク生活で口腔内の不快を感じやすくなっているのではないかと推測できます。
鶴見大学名誉教授・花田信弘氏の見解
今回の調査結果を踏まえて、
鶴見大学名誉教授/上海理工大学特任教授である
花田信弘氏にお話を伺いました。
鶴見大学名誉教授
上海理工大学特任教授
花田信弘氏
口腔内の不快感の原因は何なのでしょうか?
ジンジバリス菌をはじめとする歯周病菌が一因として挙げられます。
歯周病菌が硫化水素といった物質を分泌するのですが、この揮発性の硫化物が口腔内における悪臭の原因となります。これが、マスク着用によってより気付きやすくなったため「マスク着用による口腔内環境に関する意識調査」において、多くの人がマスク着用による口腔内不快を感じた要因だと思われます。
ジンジバリス菌による健康被害は歯周病以外にもあるとお聞きしました。
ジンジバリス菌が他の歯周病菌と違う点は、2種類のたんぱく分解酵素と外膜小胞(外膜から放出された脂質の小胞)を持っている点です。
これまで、ジンジバリス菌が脳を守る「血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)」を突破し、脳に悪影響を与えるとは考えられていませんでした。
しかし、最近の研究によってジンジバリス菌が、たんぱく分解酵素を使って血液脳関門を突破している可能性が示唆されています。また、ジンジバリス菌自体が突破出来なくとも、外膜小胞は血液脳関門を突破できることが分かっているのです。
アルツハイマー型認知症で亡くなった人の脳内から、ジンジバリス菌が持つ内毒素「リポポリサッカライド(L P S)」が発見されたのです。
また、ジンジバリス菌はキーストーン病原体(ごく少量が存在するだけで、他の微生物叢を巻き込んで病気を引き起こす微生物)ですから、アルツハイマー型認知症以外にも様々な健康被害を及ぼします。
血液を介して全身に行き渡ることで、大腸がんや咽頭がん、糖尿病、非アルコール性肝炎、動脈硬化症などの全身疾患を増悪させることが判明しています。
このような健康被害を抑えるためにオーラルケアが重要だと考えますが、どのような対策がありますか?
まず、第一に「物理的除去(歯間清掃)」が重要です。
口腔内のデンタルプラーク(歯垢)。つまりバイオフィルムを除去するのに、物理的除去は欠かせません。しかし、バイオフィルムを物理的に取りきるということは不可能です。
そこで次に有効なのが、生物学的なコントロールにより有害な菌を有用な菌に置き換える「プロバイオティクス(乳酸菌)療法」。そして「ケミカルコントロール(歯磨き剤や洗口液等)」です。
まず、歯周病菌と乳酸菌は生育のpH条件が異なります。両者は同時に培養することが出来ないんです。歯周病菌はアルカリ性の環境で増殖しますが、乳酸菌の場合は酸性の環境で増殖します。乳酸菌が増殖する状態になると歯周病菌は追い出されてしまうのです。
また、乳酸菌自身が生き残るために生成する抗菌ペプチドによって、ミュータンス菌やジンジバリス菌を減少させます。ただ、こちらに関しては乳酸菌ならどれでも効果があるというわけではないので、しっかりと口腔内環境に有効な乳酸菌が入った製品でオーラルケアを行うといいでしょう。
口腔内の健康は全身の健康。若い時からオーラルケアは非常に重要です。